竹中工務店のJCCクラウド導入事例
「現場に必要とされるシステム」の構築プロセスと社内浸透方法
当初の作業所要員配置の利用目標を100%達成。現在は内勤部門(設計、設備、管理部門など)への展開を進めており、一部で利用が開始されている。システム導入により、従来のExcel作業を大幅に削減し、年間約800時間の工数削減を実現。また、属人化していた人員配置業務の標準化も大きな成果だ。
プロジェクト推進リーダーの伊藤氏や仙石氏は、2026年末までのプロジェクト完了を目指し、全社浸透を牽引している。今回、お二人に、JCCクラウド導入からシステムカスタマイズに至る流れ、大企業におけるプロジェクト推進の原動力など、幅広くお話を伺った。

シニアチーフソリューションクリエイター
当プロジェクトの開発推進リーダー

シニアチーフエキスパート
異動配置業務を担当、
当プロジェクトの展開推進リーダー

クラウド自社開発グループ長
カスタマイズ対応における開発リーダー

竹中工務店様とJCCクラウドの出会い、導入背景 ~現場の声を反映可能なカスタマイズを可能とする既製品~
伊藤氏2021年に人員配置の効率化を目的としたシステム構築プロジェクトを立ち上げました。 私はIT部門の開発推進リーダーとして、当社の目的を達成できる既製品を調査した結果、JCCソフトの要員配置システムに出会いました。
横田既製品調査の際、特に重要視されていた点を教えてください。

伊藤氏製品ベンダーが、建設業に対する豊富な知見・ノウハウ・導入実績等を持っているかという点です。
横田ありがとうございます。ご案内した時点で、JCCクラウドは建設業をはじめとした複数社のご導入実績がございました。竹中工務店様のように、ユーザー数や拠点数が非常に多い企業様には、特に効果を発揮できます。
伊藤氏数ある既製品からJCCクラウドを採用した理由をご説明します。当社では複数の作業所(建設現場)に複数の要員を配置していますが、一人が、複数作業所に、異なる開始日で配置されることが日常的にあります。そのような複雑な要件に対応できる製品かどうかが基本的な判断ポイントでした。
さらに将来の展開も見据え、管理対象を作業所に限定せず、全社的に内勤部門へも展開できる拡張性についても重視していました。
横田作業所の複雑な要員配置を管理できる基本機能に加え、社内の管理部門にも展開可能な拡張性があるかどうかを重視されていたのですね。
伊藤氏そうですね。
逢坂JCCクラウドの利点として、カスタマイズ前提で導入を検討頂ける点があります。導入当初、竹中工務店様独自の項目で検索をしたいというご要望を頂きました。既成品ですと、独自要素の強いカスタマイズは断られてしまうことが多いと思います。その点JCCクラウドは、カスタマイズ実績、経験者ともに豊富で、カスタマイズを前提とした開発の仕組みも既にありますので、充分対応可能です。
伊藤氏パッケージ製品として継続的なバージョンアップは当然ですが、当社向けの柔軟なカスタマイズが可能かどうかが非常に重要なポイントでした。カスタマイズ前提で導入できる点が採用の決め手になりました。
同時に検討していた他社製品の多くは、基本的にはカスタマイズができず、パッケージ製品の設定変更可能な範囲での対応のみという回答でした。その制約下で導入すると、利用者の不満が高まり、またすぐ次の製品検討という悪循環に陥ります。
横田当社製品をお選びいただき心より感謝しております。ありがとうございます。
竹中工務店様のご要望とJCCソフトの対応 ~膨大なデータとの連携を実現~
逢坂導入に際し最も苦労した点は、竹中工務店様の膨大なデータの処理でした。現在は、竹中工務店様側で保有されている大量のデータを要員配置システムに取り込み表示する仕組みを構築しています。想定以上に技術者の人数や案件数が多く、最初は速度問題に悩まされ必死の思いで対応しましたが、今では貴重な経験を積ませていただいたと感謝しております。

導入後、実装に向けて直面した課題と解決策 ~「システムが使われ続ける体制」づくり~
逢坂導入直後は、既製のシステム(カスタマイズがされていない状態)にて運用を開始しました。当然ご不満の声も寄せられましたが、可能な限りスピーディに対応することを心掛けて、毎週お打ち合わせの機会を頂戴し、具体的なカスタマイズ内容、最速の進め方等を検討しています。このサイクルを繰り返すことで、不具合が寄せられたら即改修、というスピーディなリズムをつくることができています。
伊藤氏開発しても現場に活用されないシステムでは意味がありません。当社は、7本支店(東京、大阪、名古屋の大規模支店3拠点、北海道、東北、広島、九州の中規模支店4拠点)それぞれに人事担当者が所属しており、活用されることが重要です。そのために大阪本店を先行利用拠点とし、実際の使用感や追加要望を速やかに収集・フィードバックする体制を構築しました。改善は極力、当月内の完了を原則とし、現場で「使えないシステム」という印象を与えないよう留意していました。
横田要望が寄せられ次第速やかに改善し、「使い勝手が良いシステム」として認識し続けてもらうための工夫ですね。
伊藤氏おっしゃる通り、本プロジェクトの推進方針は、即修正・即利用です。利用者の満足度を高めながら利用者数を拡大していく戦略です。改善要望に対して迅速にお応えいただいているJCCソフトには感謝しています。アジャイル開発の体制も整っており、迅速な対応を強みとする、素晴らしいパートナーだと考えています。
逢坂ありがとうございます。7本支店それぞれから、毎週課題やリクエストを抽出後、即改善・即利用というサイクルをスピーディに回し、利用者を着実に増やしていくという発想はどこから生まれたのでしょうか?
伊藤氏私は長年IT部門に従事していますが、定期的に利用者の声を聞き、反映する仕組みを導入しなければ、利用者がシステムから離れ、いずれ使われなくなるという経験則を持っています。効率化を目指して導入しても、使われなければ無駄な投資として終わってしまいます。会社としてはあってはならないことですから、利用者の声を迅速に反映する「システムが使われ続ける体制」の構築が必要でした。

仙石氏実際にこのシステムを利用するのは各本支店の人事部門です。「システムが使われ続ける体制」により、実際に彼らが利用した際の生の感想や改善要望がタイムリーに寄せられますので、その内容を伊藤に伝え、JCCソフトに迅速に対応いただくことができています。
現場の生の声が反映された分かりやすい例としては、試作段階から現在まで、表示できる情報(項目)が大幅に増えたことです。「この情報も閲覧できるようしてほしい」、「この情報はすぐに確認できるようにしてほしい」など、寄せられたニーズは非常に多岐にわたりました。JCCソフトはその都度、「この部分にこのような情報を表示しましょうか」と丁寧にご提案くださり、すぐにそれを実現していただいたことが大きいですね。閲覧できる情報が、個人コード、氏名、所属だけでは、その人を理解することは難しいと感じます。確認したい情報をタイムリーに確認できて初めて、その人を多面的に理解することができます。それが実現できたことが、システムの導入効果としては最も大きなものと捉えています。
竹中工務店様の強さ ~利用者の目線と提供者の目線を同時に持つIT部門~

伊藤氏現在、JCCクラウド上に人事関連の膨大なデータを取り込んでいますが、利用者から「このような情報を見られないか」と要望が寄せられた際に、人事総務系システムをすべて担当している立場から、その情報を提供するだけでなく、追加情報を添えて提供することも珍しくありません。データ利用側と、提供側の両方の視点を持てるため、このプロジェクトにおける自分の参画意義は大きいと考えています。
逢坂利用者目線と提供者目線、いずれの目線も持ち合わせながら、プロジェクトに参画されるIT部門担当者はそうはいらっしゃいません。利用者様から、システム上でデータが確認できないというお声を頂く中、一時的に伊藤様にご対応いただくことで助けていただいています。
伊藤氏仙石が在籍している人事室では、部門長もプロジェクトのメンバーとして参画しています。定例会議で情報共有を行い、課題解決に向けた相談をその場で承諾を得る仕組みです。情報の閲覧権限などの課題もその場でエスカレーションし回答を得られるため、推進上の課題はほぼありません。
仙石氏そうですね。人事室としても、早くこのシステムを完成させ軌道に乗せたいと考えています。現在、私が課題と感じているのは、システムで利用可能な機能や、閲覧できる情報などがかなり充実してるにも関わらず、各本支店の利用者にその価値が十分に伝わっていないことです。このギャップを埋めるための効果的な情報発信が重要です。利用者に気づいてもらい、積極的に使いこなしてもらう段階に早く移行したいですね。
横田システムに対する利用者様の認知・認識が遅れがちになることについては、どの企業様も共通で抱えていらっしゃる悩みです。しかしながら、そのなかで比較しても、竹中工務店様は社内説明会の頻度や量が圧倒的に多いと感じます。システムが社内浸透しない場合、利用者だけの問題とは限りません。提供者による説明が不十分である状況もありえます。その結果、「そもそも使い方を聞いていない」、「使い方がわからなくて使っていない」というケースが発生しやすくなるのです。その点、竹中工務店様は社内で密にコミュニケーションを取られており、修正した箇所をきちんと伝え、使っていただけるように働きかけてくださっているのだろうと考えております。
やはり社内でしっかりと説明をしていただくほうが、浸透度が桁違いに違うという実感があります。

伊藤氏本社発信の取り組みが、現場ではなかなか定着しにくいという構図はどこの会社にもありますが、当社も同様です。7本支店とのコミュニケーションを活性化するために、チャットツールなどでこまめなやりとりや、活用が滞っている拠点については、上長からの直接的なコミュニケーションなど、社内ネットワークを徹底的に活用しています。現場が自ら課題を発信する習慣が生まれなければ、スピード感のある改善はできません。
仙石氏その習慣づくりのために、実際に拠点まで足を運びました。広島、九州と私たち二人で訪れ、画面を映しながら機能について説明したところ、ようやく自分事として捉えてもらえました。「そうだったんですね、もう少しこうしてほしい」、「こうなったらいいなあ」という声をその場で聞き、次の定例会議でお伝えするという流れがありました。
JCCクラウド導入後の効果 ~全社全部門を対象としたシステム構築~
伊藤氏現在の進捗は約50%です。導入当初からの目標を上方修正しているためです。当初は、作業現場の要員配置のみを目標としてスタートし、その目標は達成しました。しかし現在の最終目標は、内勤部門の全部門に対してシステムを適用し、配置を可能とすることです。設計部門、設備部門、管理部門などの全部門を対象に、このシステム1つですべての配置を可能にすることが目標です。その意味では、作業所の要員配置が可能になったことで山場は越えました。現在は、内勤部門に展開するためのカスタマイズを進めています。
内勤部門では、先月(2025年3~4月)から東京の設計部で使い始めています。その部門の稼働が軌道に乗れば、他の本支店に展開する準備がいよいよ整います。
仙石氏そうですね。次は大阪と名古屋の設計部門に展開する予定で進めていますね。
逢坂これまでも内勤部門の方を対象にした運用例はあり、運用回避のようなパターンが多かったのですが、ゼロから内勤用に仕組みを作り、検索条件や見た目も整え、これまでにないカスタマイズを行いました。
仙石氏もともと設計部門から、同じような要望が上がっていました。それであれば、既に構築が進んでいる当システムを設計部門向けにカスタマイズする方が、他システムとの連携もしやすく使い勝手の面でも良いと考え提案しました。期待通り、非常にスムーズに話を進めることができました。
伊藤氏導入前後で変化したことを教えてください。

仙石氏もともと、個人情報を集約した人事データベースは存在していましたが、プロジェクトごとに配置されている人や、設計担当者のアサインを検討するシステムは今まで導入していませんでした。当時は、7本支店それぞれの人事部門がExcelを使って管理しており、都度Excelを更新して会議資料を作成し、紙ベースで説明し、打ち合わせ内容を再びExcelに反映する…といったサイクルで業務を進めていました。現在は、すべてのデータをシステム上に集約し、画面に結果を投影しながら会議を行うことができます。個人情報は人事データと連携していますので、常に最新の情報へと更新できることが便利ですね。Excelでは載せきれない情報もその場ですべて確認できるようになりました。
横田システムご活用以前は、会議資料の作成にどのくらいの工数がかかっていたのですか?
仙石氏時間短縮を意識したとしても、2~3時間はかかっていたように思います。今はそのような資料作成自体が不要になりました。
伊藤氏プロジェクト開始時に年間削減工数試算しました。配員会議と呼ばれる人員配置決定会議の準備作業では、全本支店で年間800時間ほど会議の資料作成に費やしていることが判明しました。その手作業削減もプロジェクトの目的です。作業の属人化防止も同様で、Excel管理により担当者の長年のノウハウに依存した配置が行われていました。担当者交代時にはノウハウの引き継ぎ自体が重要課題になっていました。新システムは、誰が検索しても同じ結果で、候補者を抽出するため、誰が引き継いでも前任者に近いレベルで配置が可能です。
逢坂システムを構築する際、工数削減を意識したポイントといえば、画面に表示可能な項目を増やしたことですね。画面に表示されないことで、一つひとつデータを調べる手間が発生しますし、一つひとつは大した工数でなくても、積み上がれば結構な工数になります。加えて、Excel帳票をシステムから直接出せるよう改修を加えているのですが、この帳票を手で一から作成するとすれば、こちらも結構な工数になると感じますね。
横田検索条件もやはり的確な条件で設定されていると感じますし、結果を表示する場所も、ミスを防ぐ工夫が搭載されています。探しやすく、間違いにくく、確認しやすく作り込まれています。漏れなく抜けなく作業できるよう洗練され切っている印象です。
今後のビジョン ~二人三脚のパートナーシップで最後まで走り抜く~

伊藤氏毎年ロードマップを更新し、2026年12月末までにプロジェクトを完了し、あとは使っていただくだけという状態にしたいと考えています。
仙石氏プロジェクト完了時には、各部門への浸透もほぼ完了している状態を目指します。そのためにも、現在の積極的な推進体制は崩さず進めていきたいと考えております。
逢坂ご要望にお応えできるよう、可能な限り良いものを作り、多くの方に使っていただくために全力を尽くすつもりです。頂いたご要望をそのまま反映・改修するだけではなく、積極的により良いご提案をさせていただきます。
JCCソフトへ一言
伊藤氏JCCソフトのエンジニアは、要望を理解する能力が高く、こちらが期待する以上の提案をしていただけます。その技術力を維持し、主体的な取り組みを継続していただきたいです。当社にとって、最良のパートナーとして、引き続きご支援をお願いします。
仙石氏私は前任者から引き継いで、途中からシステム開発・導入に参画していますが、JCCソフトとお話していると、本当に建設業のことをよく理解しておられると感じます。私たちが行っている人員配置に関する知識も豊富で、業務内容を十分に把握されているように思います。システム開発といえば、まず業務の内容を一から説明して、そこから要件定義…という流れが一般的だと思っていましたが、その必要がなかったことには本当に驚きました。まるで当社でしばらく働いていたのかな、と思うくらい詳しくご存じですよね(笑)。そういった意味では、顧客側のニーズを的確に汲み取って、優れたシステムを提供いただいていると感じています。引き続きどうぞよろしくお願いいたします。